県民会議

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長野県には、精密機械等の高い技術力を誇る製造業、豊かな自然環境や個性ある歴史・伝統文化などの地域資源を活かした観光業、標高差や寒暖差など変化に富んだ気候を活かした農業など、個性豊かな産業が存在しています。これらの産業にも、人口減少は影響してきます。

まず、働き手です。人口減少のなか、これまでの労働集約型のビジネスモデルは維持できません。一人当たりの付加価値労働生産性※1を高めることが重要で、AIやロボットの積極的な導入に取り組む必要があります。一方、AI等ですべての仕事が代替できるわけではなく、人口減少下においては、多様な人材の確保がこれまで以上に重要になります。また、日本全体でも人口が減少するので、これまでと同じ顧客だけでは、売上げも減少してしまいます。今後成長が見込まれる海外の顧客を獲得する必要もあるでしょう。こうした取組を進めるためには、企業等に体力が必要であり、ある程度の経営規模も必要になってきます。個々の企業等が経営を積極的に変革するとともに、業務の共同化や企業規模の拡大に取り組むことも重要です。

企業だけの問題ではありません。人口減少に伴い、県や市町村では職員や財源の確保が難しくなることが予想されます。長野県は小規模な自治体が極めて多いですが、法令に基づく市町村の事務は、平成の大合併後の市町村を想定して考えられていますから、小規模な自治体では今後さらに事務の執行が難しくなることが予想されます。

長野県は、県内全域に広域連合があるなど、市町村の連携基盤が一定程度整っています。この特長を生かし、広域連携の一層の推進や、業務の共同化などにより、県と市町村が協力していくことが重要です。

企業、行政と述べてきましたが、社会の複雑化等に伴い、企業と行政だけでは対処できない課題が増え、ソーシャルセクター※2の活躍が益々重要となっています。企業や行政、ソーシャルセクターの共創を推進することにより、社会的共通資本※3(公共交通、医療等)を維持・発展させるとともに、社会課題の解決に協力して取り組んでいく必要があります。

養蚕、製糸業で始まった長野県の産業ですが、時代の変化に合わせてしなやかに、さながら蚕のようにその姿を変えてきました。時代の転換点である今こそ、企業も行政も経営を革新するチャンスです。皆で共創して、新時代にふさわしい社会への飛躍を目指していきましょう。

※1:付加価値額(実質県内総生産)を県内就業者数で除したもの。就業者一人あたりが生み出した付加価値額を示す指標
※2:社会的課題の解決を目的とする組織・団体の総称。非営利だけでなく営利も含まれる。(NPO、公益法人、自治会、社会的課題の解決を目的とする企業・団体等)
※3:経済学者・故宇沢弘文氏が提唱した概念で「一つの国ないしは特定の地域に住むすべての人々がゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置」のこと。自然資本(森林、水大気、土壌等)、社会的インフラストラクチャー(道路、上下水道、公共交通等)、制度資本(教育、医療等)から成る